思春期に多く見られる「起立性調節障害(OD: Orthostatic Dysregulation)」。朝起きられない、立ちくらみ、倦怠感、頭痛…こうした症状は、怠けや学校嫌いと誤解されがちですが、実は自律神経の不調が原因です。本記事では、その実態と対応法を小学生~高校生の保護者向けにわかりやすくまとめました。
起立性調節障害ってどんな病気?
起立時に血圧が下がることで、脳への血流が不足して「めまい」「立ちくらみ」「失神」などが起こる自律神経失調症の一種です。特に小学校高学年から中学生(10~16歳)に多く、 女児にやや多い傾向があります。
身体は立ち上がると、重力により下半身に血液がたまります。本来は交感神経が働き、血管を収縮させて血圧を保ちますが、ODではその調整が上手く働かず、結果として脳が酸欠状態に陥るのです
主な症状と特徴
◆ 主な症状
- 立ちくらみ・めまい・ふらつき
- 動悸・息切れ・失神
- 頭痛・倦怠感
- 吐き気・腹痛・食欲不振
- 朝起きられない、登校困難
- 夜の入眠困難、昼夜逆転(夜元気、朝起きられない)
- 乗り物酔いやすい、顔色が悪い
◆ 特徴的な傾向
- 午前中に症状が強く、午後になると軽減されることが一般的。
- 雨や低気圧の日に悪化しやすい「天気痛」と重なることも。
- 思春期のホルモンバランスや勉強・人間関係などのストレスが引き金となることが多い。
- 中等症以上では不登校につながるケースもあり、重症では社会復帰までに数年かかることもある。
起立性調節障害になりやすい背景
- 自律神経の未熟さ:思春期に入ると神経系のバランスが崩れやすくなる。
- 遺伝・体質:親にも同様の症状があったケースが多く、遺伝的素因も示唆される。
- 脳への血流不足:下肢の筋力低下や体液量の不足(脱水・低血圧)なども要因。
- ストレスや不規則生活:試験、友人関係、気分の浮き沈みなど心理面も大きく関与。
- 気圧・気温の変化:特に梅雨や台風など低気圧の日は悪化しやすい。
診断方法
まずは、他の病気(心疾患、貧血、甲状腺、てんかんなど)を除外するために診察や血液検査、心電図などを行います。
その後、「新起立試験」と呼ばれる検査で、10分間横になった後に立ち上がって、血圧・脈拍の変化を測定します。これにより、以下の4タイプに分類されます。
- 起立直後性低血圧
- 体位性頻脈症候群(POTS)
- 血管迷走神経性失神
- 遷延性起立性低血圧
治療とケア
セルフケア・環境調整
- 規則正しい生活習慣(早寝早起き、睡眠環境を整える)
- 水分・塩分の十分な摂取
- 朝日は浴びる
- 運動(散歩・立位脚踏み)で筋力アップ
- ゆっくりと起立する、座位を保持しすぎない
- 気圧に配慮し、低気圧の日は無理しない
医療的ケア
- 昇圧剤など薬物療法(必要に応じ)
- 漢方薬が有効なケースもある
家族・学校の理解と協力
- 起立性調節障害は「怠け」ではなく、医学的な病気です
- 家族で情報共有し、ストレス軽減に配慮する姿勢が重要
- 学校との連携:遅刻・欠席の調整、理解ある対応を支援してもらう
経過と予後
軽症例では2~3ヶ月ほどのセルフケアで回復することが多く、発症ピークを過ぎると自然軽快する傾向があります。
ただし、重症例では不登校が長引くこともあり、社会復帰に数年かかる場合もあるため、まずは早期発見と対応が大切です。
まとめ
- 起立性調節障害は「起き上がると脳への血流が足りなくなる」病気。
- 小学生高学年~中学生に多く、特に朝の症状が顕著で午後には改善しやすい。
- 原因は自律神経の未発達、遺伝、脱水、ストレス、天気など複合的要因。
- 「新起立試験」で診断し、薬・セルフケア・学校や家庭の協力で治療。
- 軽症なら短期改善、重症なら長期サポートが必要。
もし、お子さまが
- 朝なかなか起きられない
- 立ち上がると目まいや動悸がする
- 午前中調子が悪く、午後になると元気になる
といった症状がみられたら、まずセルフチェックをし、小児科などで相談してみましょう。ODは適切な対応で良くなる病気です。家族・学校が一緒に理解し、支えていくことが何よりの救いになります。
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