「もしかして、うちの子も…?」と思ったら
朝、起きられない。学校に行こうとすると頭が痛い、気持ち悪い、めまいがする。
それでも午後になると元気そうに見えて、「さぼっているの?」と周囲から誤解されてしまう…。
それは「起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)」かもしれません。
起立性調節障害は、思春期の子どもに多くみられる自律神経の不調で、心と体にさまざまな影響を及ぼします。近年、その存在がようやく認知されはじめましたが、正しく理解されていない場面も多く、子どもたちや保護者が孤立してしまうこともあります。
この記事では、「起立性調節障害とは何か」について、できるだけわかりやすく、かつ信頼できる情報を元に解説していきます。
起立性調節障害とは?――自律神経のアンバランスから起こる体調不良
起立性調節障害とは、立ち上がったときや朝起きたときに、血圧の調節がうまくいかず、全身に血液が行き渡らなくなる病気です。
主に自律神経の働きが不安定になることで、さまざまな不調を引き起こします。
自律神経とは?
自律神経は、体温調節や血圧、脈拍、消化などを自動で調整する“体の司令塔”のようなもの。日中は活動モードの「交感神経」、夜はリラックスモードの「副交感神経」がバランスよく働いています。
しかしこのバランスが崩れると、体が思うように動かなくなってしまいます。
誰に多い?
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主に10〜17歳の思春期の子ども
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特に真面目・感受性が強い・頑張り屋のタイプが多いといわれています
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男女比はやや女子に多い傾向
どんな症状があるの?
症状は日によって違うこともあり、波があります。
代表的な症状
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朝起きられない
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立ちくらみ・めまい
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頭痛・倦怠感
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動悸・息切れ
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食欲不振・吐き気
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午後になると少し元気になる
心理面や生活への影響
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学校に行けなくなる(遅刻・欠席が増える)
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集中力が続かない
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気分が落ち込みやすくなる
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周囲から「怠けている」「気持ちの問題」と誤解されやすい
チェックしてみよう!――こんな症状、ありませんか?
□ 朝、起きられない・布団から出られない
□ 頭痛や腹痛をよく訴える
□ 学校に行ける日と行けない日がある
□ 午後になると少し元気そうに見える
□ 検査では異常なしと言われた
□ 「甘えてるだけ」と言われてしまったことがある
複数当てはまる場合、起立性調節障害の可能性があります。無理に頑張らせず、体の状態を丁寧に見てあげることが大切です。
原因は?なぜ起こるの?
起立性調節障害の主な原因は、自律神経のアンバランスです。
引き金となるもの
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急激な成長(身長がぐんと伸びる時期)
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ストレスや環境の変化(進学・いじめ・家庭環境)
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睡眠不足・不規則な生活
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真面目すぎる・頑張りすぎる性格傾向
※本人の「甘え」や「やる気のなさ」ではありません。
診断と検査:病院に行くタイミングは?
「朝起きられない」「めまいがひどい」などの症状が続くときは、医療機関での受診をおすすめします。
どこに相談すればいい?
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小児科
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思春期外来・小児心療内科
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かかりつけ医からの紹介も有効です
主な検査内容
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起立試験(立ち上がったときの血圧や脈拍の変化を測定)
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血液検査・心電図など、他の病気との鑑別も
治療・サポートの方法
起立性調節障害の治療は、生活習慣の見直しと必要に応じた薬物療法が中心です。
生活面の改善
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規則正しい生活(夜ふかしを避け、朝日を浴びる)
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水分と塩分の十分な補給
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無理のない登校(部分登校、午後から登校など)
薬物療法
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血圧を安定させる薬
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自律神経の働きを整える薬 など(医師の判断で処方)
心理的な支援
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「頑張らなくていいよ」と伝える安心感
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学校や周囲の理解・配慮(登校刺激にならない対応)
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カウンセリングや親の会などの利用
よくある誤解と、その対処法
よくある誤解と事実を表にまとめました。
誤解 | 事実 |
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甘えているだけでは? | 自律神経の病気です。本人の意志でどうこうできるものではありません。 |
午後は元気なら学校に行けるのでは? | 朝と午後では体調がまったく違う日もあります。 |
精神疾患なの? | 精神的な要因ではなく、身体的な機能不全によるものです。 |
将来はどうなるの?――就職・自立の見通し
思春期をピークに、高校卒業前後で改善するケースが多いとされています。
ただし個人差があり、成人後も症状が残る人もいます。
ですが、適切な支援や理解があれば、就職や自立も十分に可能です。
当サイトでは、「ODとともに働く」「体調に合わせた仕事の選び方」などの情報も発信しています。
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まとめ
- 起立性調節障害は「起き上がると脳への血流が足りなくなる」病気。
- 小学生高学年~中学生に多く、特に朝の症状が顕著で午後には改善しやすい。
- 原因は自律神経の未発達、遺伝、脱水、ストレス、天気など複合的要因。
- 「新起立試験」で診断し、薬・セルフケア・学校や家庭の協力で治療。
- 軽症なら短期改善、重症なら長期サポートが必要。
もし、お子さまが
- 朝なかなか起きられない
- 立ち上がると目まいや動悸がする
- 午前中調子が悪く、午後になると元気になる
といった症状がみられたら、まずセルフチェックをし、小児科などで相談してみましょう。ODは適切な対応で良くなる病気です。家族・学校が一緒に理解し、支えていくことが何よりの救いになります。
「この子にどう接したらいいのか、わからない」
「家族の中で孤立してしまっている気がする」
そんなときは、どうぞひとりで抱え込まずにご相談ください。
ODサポートルームでは、カウンセリングや情報提供、親の会の紹介など、状況に応じたサポートを行っています。
あなたとお子さんが、自分らしく歩んでいけるよう、ともに考えていきます。
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