この記事でわかること
この記事では、起立性調節障害(OD)とスマホの関係について、次のような疑問にお答えします。
- 起立性調節障害の子どもがスマホばかり見てしまう理由
- 「スマホ依存」とODの関係
- 夜更かしや生活リズムとの関係
- 保護者ができる関わり方
- スマホを取り上げる前に考えてほしいこと
「スマホをやめさせれば解決するのでは?」と思っている方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。
「うちの子は、朝起きられないのに夜はスマホばかり見ています。」
「何度注意しても、布団の中で動画を見続けています。」
「スマホを取り上げたほうがいいのでしょうか?」
起立性調節障害(OD)のお子さんを持つ保護者の方から、このようなご相談を受けることは少なくありません。
スマホを長時間使うことで、夜更かしになり、朝起きられなくなる。すると「起立性調節障害だから起きられないのか、それともスマホが原因なのか」と悩まれる方も多いでしょう。
確かに、スマホの使いすぎは睡眠の質や生活リズムに影響を与える可能性があります。
一方で、「スマホばかり見ている」という行動だけに目を向けてしまうと、本当に苦しんでいる原因を見逃してしまうことがあります。
先日、朝日新聞に掲載された「『5分だけ』のつもりが深夜に スマホから自分の時間を取り戻すには」という記事では、スマホをやめられない背景には、疲労やストレス、不安、孤独感などがあり、「意思が弱いからではない」という臨床心理士の視点が紹介されていました。
この記事を読み、私は「起立性調節障害の子どもたちにも、そのまま当てはまる部分が多い」と感じました。
今回は、「起立性調節障害とスマホ」の関係について、「スマホをやめさせる方法」ではなく、「なぜスマホを手放せないのか」という視点から考えてみたいと思います。
結論から言えば、起立性調節障害のお子さんがスマホを見続けてしまうのは、「スマホ依存だから」という一言では説明できません。背景には、体調不良や孤独感、不安、生活リズムの乱れなど、さまざまな要因が重なっています。だからこそ、スマホだけを悪者にするのではなく、「なぜスマホが必要になっているのか」を理解することが大切です。
もし今、
- 起立性調節障害でスマホばかり見ている
- 夜更かしが続いている
- 朝起きられない
- スマホ依存ではないかと心配している
そんな悩みを抱えている保護者の方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
起立性調節障害の子どもがスマホを見続けてしまう理由
「学校を休んでいるのにスマホを見る元気はある。」
そんなふうに感じたことはありませんか。
しかし、実際にODの子どもたちの話を聞いていると、その見え方は大きく変わります。
起立性調節障害になると、
- 朝起きられない
- めまいがする
- 頭痛が続く
- 倦怠感が強い
- 集中力が続かない
などの症状によって、学校生活だけでなく、日常生活そのものが大きく制限されます。
好きだった部活動に行けない。
友達と遊べない。
勉強も思うように進まない。
家族以外と話す機会も減ってしまう。
そんな毎日が続けば、不安や孤独を感じるのは当然のことです。
その中で、スマホは数少ない「社会とのつながり」になります。
SNSで友達の近況を見る。
好きな動画を見て気分転換をする。
ゲームで誰かと交流する。
好きな音楽を聴く。
体調が悪くても、横になったままでできる。
ODの子どもにとって、スマホは単なる娯楽ではなく、「今の自分でもできること」の一つになっている場合があります。
もちろん、だからといって長時間のスマホ利用が望ましいというわけではありません。
しかし、「スマホばかり見ている」という行動だけを見てしまうと、その背景にある苦しさを見落としてしまうのです。
「スマホ依存」だけでは説明できないこと
最近では、「スマホ依存」という言葉を耳にする機会が増えました。
長時間スマホを使うことで、
- 勉強に集中できない
- 睡眠不足になる
- イライラする
- やめたくてもやめられない
こうした状態は確かに問題です。
しかし、朝日新聞の記事でも紹介されていたように、「スマホを使う」という行動には、それぞれ理由があります。
臨床心理学では、「その行動がどのような役割を果たしているのか」を考える「機能分析」という考え方があります。
例えば、
疲れた心を休ませたい。
不安を忘れたい。
寂しさを紛らわせたい。
嫌なことを考えずに済む時間がほしい。
スマホは、そのような気持ちを一時的に和らげる役割を果たしていることがあります。
ODの子どもも同じです。
学校へ行けない焦り。
将来への不安。
友達との差が広がっていく苦しさ。
「また休んでしまった」という自己否定。
こうした気持ちを抱えながら生活している子どもは少なくありません。
だからこそ、「スマホを見ないで」と言われても、その代わりになる安心感がなければ、やめることは難しいのです。
「スマホばかり見ないで」と言われるほど苦しくなることも
保護者としては、
「夜更かしになるからやめてほしい。」
「朝起きられない原因になる。」
そう考えるのは自然なことです。
実際、就寝前のスマホ利用は、ブルーライトの影響や脳への刺激によって眠りにつきにくくなる可能性があるといわれています。
そのため、生活リズムを整えることが大切な起立性調節障害では、スマホとの付き合い方を見直すことも重要です。
ただし、ここで注意したいのは、「スマホを取り上げれば解決する」と考えないことです。
スマホは、本人にとって
- 唯一の楽しみ
- 友達とのつながり
- 気分転換
- 不安を忘れられる時間
になっていることがあります。
その状態で一方的にスマホを禁止すると、
「自分の居場所までなくなった。」
「誰も自分の気持ちを分かってくれない。」
そんな思いを抱いてしまうこともあります。
もちろん、好きなだけスマホを使ってよいという意味ではありません。
大切なのは、「どうしてスマホが必要になっているのか」を理解したうえで、生活リズムを整える方法を一緒に考えることです。
起立性調節障害では「スマホしかできない時間」がある
ODになると、体調が悪い日は本を読むことすらつらいことがあります。
文字を読むだけで頭痛がする。
勉強は集中できない。
テレビを見る気力もない。
そんな日でも、スマホなら横になったまま操作できます。
短い動画を見る。
好きな曲を聴く。
SNSを眺める。
そのくらいならできる、という子どももいます。
保護者から見ると、
「元気そうなのに。」
と思えるかもしれません。
しかし、「スマホができること」と「学校へ行けること」は、まったく別の話です。
スマホを触れるからといって、学校生活を送れる体力や集中力があるとは限りません。
だからこそ、
「スマホを触れるなら学校へ行けるでしょう。」
という言葉は、本人を追い詰めてしまうことがあります。
体調の波が大きい起立性調節障害では、「できること」と「できないこと」が日によって変わることも珍しくありません。
そのことを理解したうえで接することが、親子双方にとって大切になります。
起立性調節障害・夜更かし・スマホの悪循環
ここまで読んでいただくと分かるように、スマホは「原因」であると同時に、「結果」でもあります。
例えば、こんな流れです。
起立性調節障害で朝起きられない
↓
学校へ行けない日が続く
↓
友達と会う機会が減る
↓
家で過ごす時間が長くなる
↓
スマホを見る時間が増える
↓
夜更かしになる
↓
生活リズムがさらに乱れる
↓
翌朝も起きられない
この悪循環だけを見ると、「スマホをやめればいい」と思ってしまいがちです。
しかし、その出発点には、起立性調節障害による体調不良や生活の変化があります。
つまり、スマホは悪循環の一部ではあっても、すべての原因ではありません。
大切なのは、「スマホを取り上げること」ではなく、この悪循環をどこから断ち切るのかを考えることです。
そのためには、まず「なぜスマホを見てしまうのか」という背景を理解することが、回復への第一歩になります。
「スマホをやめる」ではなく、「安心できる時間」を増やす
では、保護者はどのように関わればよいのでしょうか。
スマホの利用時間を制限することも、ときには必要かもしれません。しかし、それだけでは根本的な解決にならないことが多いのも事実です。
大切なのは、「スマホを使わなくても安心して過ごせる時間」を少しずつ増やしていくことです。
例えば、
- 好きな音楽を一緒に聴く
- 温かい飲み物を飲みながら話をする
- 体調の良い日は短時間だけ散歩をする
- 趣味や好きなことに触れる時間をつくる
- 家族と何気ない会話をする
こうした時間は、一見するとスマホとは関係がないように思えるかもしれません。
しかし、「安心できる時間」が増えることで、スマホだけに頼らなくても気持ちを落ち着かせられる場面が少しずつ増えていきます。
もちろん、すぐに変化が見られるわけではありません。
起立性調節障害は、体調に波がある病気です。
昨日できたことが今日はできないこともあります。
だからこそ、「今日はスマホを見る時間が少し短かったね」「今日は一緒にお茶が飲めたね」と、小さな変化を一緒に喜ぶことが大切ではないでしょうか。
起立性調節障害と睡眠|生活リズムを整えることも大切
ここまで、「スマホだけが悪いわけではない」というお話をしてきました。
一方で、起立性調節障害の改善を考えるうえで、睡眠や生活リズムを整えることはとても大切です。
夜遅くまでスマホを使うことで、
- 寝つきが悪くなる
- 睡眠時間が短くなる
- 朝起きるのがさらに難しくなる
という悪循環につながることがあります。
ただし、ここで忘れてはいけないのは、「スマホが起立性調節障害の原因」というわけではないということです。
起立性調節障害は、自律神経の働きが大きく関係する病気であり、スマホだけが原因で発症するものではありません。
だからこそ、
「スマホをやめれば治る」
「スマホばかり見ているから朝起きられない」
と決めつけるのではなく、体調や生活全体を見ながら、一人ひとりに合った生活リズムを整えていくことが大切です。
保護者ができる5つの関わり方
起立性調節障害のお子さんと向き合う中で、「何をしてあげればいいのか分からない」と感じる保護者の方も多いと思います。
そんなときは、次の5つを意識してみてください。
① 「スマホを見ている時間」ではなく「理由」に目を向ける
「なぜスマホを見ているの?」
と問い詰めるのではなく、
「今日はどんな一日だった?」
「何か気になることがあった?」
そんな会話から始めてみましょう。
子どもは、自分でも気持ちをうまく言葉にできないことがあります。
だからこそ、答えを急がず、話せるタイミングを待つことも大切です。
② 「スマホをやめなさい」より「何か一緒にしよう」
スマホを取り上げることよりも、
「一緒におやつを食べよう」
「少し外の空気を吸いに行こう」
という声かけのほうが、自然とスマホから離れられることがあります。
③ 小さな成功体験を積み重ねる
生活リズムは、一日で変わるものではありません。
昨日より10分早く寝られた。
朝、カーテンを開けられた。
午前中に少し起きていられた。
そんな小さな変化を認めることが、次の一歩につながります。
④ 子ども自身を責めない
「また夜更かししたの?」
「だから朝起きられないんでしょう。」
そんな言葉は、子ども自身が一番自分に向けています。
起立性調節障害の子どもたちは、「学校へ行きたいのに行けない」「頑張りたいのに体がついていかない」という葛藤を抱えていることが少なくありません。
だからこそ、責める言葉よりも、
「今日は体調どう?」
「何か困っていることはある?」
という言葉のほうが、子どもの安心につながります。
⑤ 一人で抱え込まない
保護者もまた、不安や疲れを抱えています。
「このままで大丈夫なのかな。」
「進学はどうなるのだろう。」
「仕事を休んで付き添う日々が続いている。」
そんな悩みを一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。
子どものことを支えるためには、保護者自身にも安心して話せる場所が必要です。
「スマホの問題」の奥にあるものを見つめてみませんか
起立性調節障害の相談を受けていると、「スマホを何とかしたい」というご相談の背景には、別の悩みが隠れていることがよくあります。
学校へ行けない不安。
親子関係のすれ違い。
進路への焦り。
友人関係の悩み。
体調が良くならないもどかしさ。
スマホは、その苦しさが表面に現れた一つの行動であることも少なくありません。
だからこそ、「スマホを取り上げるかどうか」を考える前に、「この子は何に苦しんでいるのだろう」という視点を持つことが、回復への第一歩になるのではないでしょうか。
一人で悩まず、ご相談ください
起立性調節障害は、症状だけでなく、学校生活や家庭生活、進路、人間関係など、さまざまな悩みが重なりやすい病気です。
そして、その悩みは家庭ごとに異なります。
「スマホばかり見ている。」
「夜更かしが続いている。」
「親子で言い合いになってしまう。」
そんな状況でも、背景を一緒に整理していくことで、見えてくるものがあります。
私はこれまで、多くの起立性調節障害のご本人や保護者のお話を伺ってきました。
大切にしているのは、「こうすれば必ず良くなる」という答えを押しつけることではありません。
一人ひとりの状況や気持ちを丁寧にお聞きし、そのご家庭に合った一歩を一緒に考えることです。
もし今、
「誰かに話を聞いてほしい」
「子どもへの接し方が分からない」
「医療機関では相談しきれないことがある」
と感じているなら、一人で抱え込まずにご相談ください。
小さな悩みでも構いません。
一緒に整理しながら、お子さんとご家族にとって無理のない方法を考えていきましょう。
ご希望の方は下記からご予約ください。
気になるQ&A
よくある質問をQ&Aにまとめました。
Q. 起立性調節障害の子どもがスマホばかり見ています。スマホ依存でしょうか?
長時間スマホを利用しているからといって、必ずしもスマホ依存とは限りません。
起立性調節障害では、学校へ行けないことによる孤独感や不安、体調不良から、自宅で過ごす時間が長くなります。その結果、スマホが社会とのつながりや気分転換の手段になっていることがあります。
まずは「なぜスマホを必要としているのか」という背景にも目を向けることが大切です。
Q. スマホを取り上げれば生活リズムは改善しますか?
スマホの利用時間を見直すことは大切ですが、それだけで起立性調節障害が改善するわけではありません。
睡眠、生活リズム、体調、不安、ストレスなどを含めて考えることが重要です。
Q. 起立性調節障害と夜更かしは関係がありますか?
夜更かしは生活リズムを乱し、翌朝さらに起きづらくなることがあります。
一方で、起立性調節障害では体調や自律神経の影響で眠れないこともあります。
「夜更かし=本人の怠け」ではなく、体調全体を見ながら対応することが大切です。
Q. 保護者はどう接すればよいでしょうか?
まずはスマホを責めるのではなく、お子さんの不安や困りごとに耳を傾けてみてください。
安心して話せる環境をつくることが、回復への第一歩になります。
その他のQ&Aはこちらをご覧ください。
まとめ|スマホを責める前に、「その子の毎日」を見てみよう
起立性調節障害のお子さんがスマホを見続けていると、心配になるのは当然のことです。
しかし、その背景には、
- 朝起きられないつらさ
- 学校へ行けない不安
- 孤独感
- ストレス
- 将来への焦り
など、さまざまな思いが隠れていることがあります。
スマホは、ときに生活リズムを乱す原因になります。
一方で、苦しい毎日を支える「居場所」や「安心できる時間」になっていることもあります。
だからこそ、「スマホを取り上げるかどうか」だけに目を向けるのではなく、「なぜスマホが必要になっているのか」を理解することが大切です。
その視点を持つことで、親子の関係が少し変わり、お子さんが安心して前を向けるきっかけになるかもしれません。
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